エディンバラの旧市街と新市街とは?
エディンバラ市の概要と歴史
エディンバラは、スコットランドの首都であり、その壮麗な歴史と建築で知られる都市です。中世からの歴史を刻む旧市街(Old Town)と、18世紀に計画的に建設された新市街(New Town)の二つのエリアが、街の中心部を形成しています。旧市街は、中世の街並みを色濃く残す迷路のような通りや建物が特徴で、新市街は、整然としたジョージアン様式の建築が並ぶエリアです。この二つのエリアが融合した独特の景観は、エディンバラを世界でも特異な都市にしています。
世界遺産登録の理由とその価値
エディンバラの旧市街と新市街は、その歴史的、建築的価値から1995年にユネスコの世界遺産に登録されました。登録の理由は以下の通りです。
- 歴史的価値: エディンバラ旧市街は、中世からの都市計画が今も残り、その狭い通りや路地、歴史的建造物が中世の雰囲気を今に伝えています。一方で、新市街は、18世紀の啓蒙時代における計画都市の成功例として評価されており、ジョージアン様式の美しい建築群が特徴です。
- 建築的価値: 旧市街のゴシック様式やルネサンス様式の建物と、新市街のジョージアン様式の建物が共存しており、異なる時代と様式が調和している点が高く評価されています。これにより、エディンバラは「二重の都市」として、その建築的多様性が世界的に認められています。
- 文化的価値: エディンバラは、文学や哲学、科学の分野で世界的に知られており、特に18世紀の啓蒙運動において重要な役割を果たしました。今日でも、エディンバラは多くの文学フェスティバルや文化イベントを通じてその伝統を受け継いでいます。
エディンバラへのアクセス方法
エディンバラへのアクセスは、スコットランド内外から非常に便利です。以下に、主なアクセス方法を紹介します。
- 空路: 最寄りの空港はエディンバラ空港(Edinburgh Airport)で、ヨーロッパ各地や北米からの直行便が多数運行されています。空港から市内中心部まではトラムやバスで約30分です。
- 鉄道: エディンバラ・ウェイヴァリー駅(Edinburgh Waverley Station)は、イギリス国内の主要都市からアクセスできる鉄道の拠点であり、ロンドンからは高速列車で約4時間半です。駅は市内中心部に位置し、旧市街や新市街へのアクセスが非常に便利です。
- バス: エディンバラは、スコットランド国内外から長距離バスも利用可能で、市内のバスターミナルから旧市街や新市街へは徒歩またはタクシーで数分です。
エディンバラ旧市街の見どころ
エディンバラ城とロイヤル・マイル
エディンバラ旧市街の象徴的な存在であるエディンバラ城は、街を見下ろす丘の上にそびえ立つ要塞で、その歴史は千年以上に及びます。
エディンバラ城の歴史と建築
エディンバラ城は、7世紀にその起源を持ち、以来スコットランドの王室と軍事の中心として重要な役割を果たしてきました。城内には、スコットランド王冠や王笏などの王室の宝物が展示されており、また、城の一部にはセント・マーガレット礼拝堂(St. Margaret’s Chapel)、ホール・オブ・ホリールード(Great Hall)、戦争博物館などがあります。これらの建物は、ゴシック様式やルネサンス様式が組み合わさっており、スコットランドの歴史と文化を感じさせる貴重な遺産です。
ロイヤル・マイル
エディンバラ城からホリールード宮殿まで続くロイヤル・マイル(Royal Mile)は、旧市街のメインストリートであり、観光の中心地です。ロイヤル・マイルには、伝統的なスコットランドのパブやショップ、歴史的建造物が並び、エディンバラの雰囲気を存分に味わうことができます。また、通りの途中には、聖ジャイルズ大聖堂やグラスマーケットなど、多くの観光スポットが点在しています。
ホリールード宮殿とアーサーズ・シート
ホリールード宮殿(Palace of Holyroodhouse)は、イギリス王室の公式のスコットランド滞在先であり、その歴史と豪華さで知られています。
ホリールード宮殿の歴史と見どころ
ホリールード宮殿は、12世紀に設立され、その後、スコットランド王室の居住地として使用されました。宮殿内には、メアリー・ステュアート女王が住んでいた部屋や、王室の礼拝堂があり、これらはガイドツアーで見学することができます。特に、メアリー女王の部屋は、彼女が滞在していた時代の家具や装飾が再現されており、歴史ファンにとっては必見です。
アーサーズ・シート
ホリールード宮殿のすぐ近くにあるアーサーズ・シート(Arthur’s Seat)は、標高約250メートルの丘で、エディンバラを一望できる絶好のビュースポットです。この丘は、火山の跡地であり、ハイキングコースとしても人気があります。頂上からの景色は圧巻で、エディンバラの街並みや遠くにはフォース湾まで見渡せます。
聖ジャイルズ大聖堂とグラスマーケット
エディンバラ旧市街には、宗教的な中心地である聖ジャイルズ大聖堂と、歴史あるグラスマーケットがあります。
聖ジャイルズ大聖堂
聖ジャイルズ大聖堂(St Giles’ Cathedral)は、エディンバラの宗教的な中心であり、その起源は12世紀に遡ります。大聖堂はゴシック様式で建てられ、美しいステンドグラスや石彫りが特徴です。特に、有名なティストンのチャペル(Thistle Chapel)は、スコットランドの最高騎士団であるガーター騎士団の礼拝堂で、その豪華な装飾は見逃せません。また、大聖堂では定期的にコンサートや宗教行事が行われており、訪れる人々に静かな感動を与えます。
グラスマーケット
グラスマーケット(Grassmarket)は、旧市街の西側に位置する歴史的な広場で、かつては市場や処刑場として利用されていました。現在では、レストランやカフェ、パブが集まるエリアとして人気があります。また、週末には、クラフトマーケットやフードマーケットが開催され、多くの観光客や地元の人々で賑わいます。グラスマーケットから見上げるエディンバラ城の景色も、写真映えするスポットとして有名です。
エディンバラ新市街の見どころ
ジョージアン様式の建築とプリンシズ・ストリート
エディンバラ新市街は、18世紀のジョージアン様式で計画的に建設されたエリアであり、その建築美と整然とした街並みが特徴です。
ジョージアン様式の建築
新市街の建物は、ジョージアン様式の典型的なデザインを持ち、シンプルでありながらも洗練された美しさがあります。これらの建物は、対称性や均整のとれたファサード、大きな窓が特徴で、18世紀のエディンバラの豊かさと繁栄を象徴しています。新市街の主要な通りであるジョージ・ストリート(George Street)やクイーン・ストリート(Queen Street)には、商店やレストランが並び、その中には歴史的な建物も数多く残っています。
プリンシズ・ストリート
プリンシズ・ストリート(Princes Street)は、新市街の主要なショッピングストリートであり、エディンバラで最も賑やかな通りの一つです。ストリートには、世界的なブランドショップやデパートが立ち並び、観光客や地元の人々で常に賑わっています。プリンシズ・ストリートの南側には、プリンシズ・ストリート・ガーデンズ(Princes Street Gardens)が広がり、美しい公園とエディンバラ城の景観を楽しむことができます。
シャーロット広場とクイーン・ストリート・ガーデン
エディンバラ新市街には、優雅な広場と美しい庭園が点在しており、シャーロット広場とクイーン・ストリート・ガーデンはその代表的な例です。
シャーロット広場
シャーロット広場(Charlotte Square)は、新市街の西端に位置する広場で、ジョージアン建築の最高傑作の一つとされています。広場の中心には、美しい庭園があり、周囲にはジョージアン様式の邸宅が立ち並んでいます。特に、広場北側に位置するビュート・ハウス(Bute House)は、スコットランド政府のファースト・ミニスターの公式邸宅として使用されています。シャーロット広場は、エディンバラ国際ブックフェスティバルの会場としても知られ、毎年多くの文学愛好家が訪れます。
クイーン・ストリート・ガーデン
クイーン・ストリート・ガーデン(Queen Street Gardens)は、新市街の中心に位置するプライベートガーデンで、ジョージアン建築に囲まれた美しい緑地です。ガーデンは一般には公開されていませんが、周辺の住民が利用するために設置されており、その静かな雰囲気が魅力です。また、ガーデン周辺には多くのジョージアン建築が立ち並び、その中にはスコットランド国立肖像画ギャラリー(Scottish National Portrait Gallery)などの文化施設も含まれています。
スコット記念塔とプリンシズ・ストリート・ガーデンズ
エディンバラ新市街のランドマークとして知られるスコット記念塔と、その周囲に広がるプリンシズ・ストリート・ガーデンズは、観光客にとって必見のスポットです。
スコット記念塔
スコット記念塔(Scott Monument)は、19世紀の偉大なスコットランドの作家、サー・ウォルター・スコットを記念して建てられた塔で、高さ60メートルのゴシック様式の建築です。塔の内部には狭い階段があり、頂上からはエディンバラ市内の素晴らしい景色を一望することができます。塔の周囲には、スコットの作品に登場するキャラクターの彫像が配置されており、文学ファンにとっては感動的な場所です。
プリンシズ・ストリート・ガーデンズ
プリンシズ・ストリート・ガーデンズは、エディンバラの中心に位置する美しい公園で、エディンバラ城の麓に広がっています。ガーデンズは、旧市街と新市街を隔てる緑のオアシスであり、市民や観光客がリラックスした時間を過ごす場所として親しまれています。特に、春や夏には花々が咲き乱れ、秋には紅葉が美しい景色を作り出します。また、ガーデンズ内には、スコット記念塔やロス噴水など、見どころがたくさんあります。
エディンバラの文化と建築
中世とルネサンスの建築
エディンバラ旧市街には、中世やルネサンス期の建築が多く残されており、その歴史的価値が高く評価されています。
中世建築の特徴
エディンバラ旧市街には、中世の石造りの建物や狭い路地が多く残っており、特にエディンバラ城周辺やロイヤル・マイル沿いには、当時の都市計画や建築様式が色濃く反映されています。ゴシック様式の教会や塔が多く見られ、これらの建物はスコットランドの歴史や宗教の影響を物語っています。
ルネサンス建築の影響
ルネサンス期には、エディンバラにもイタリアやフランスからの建築様式が導入され、石造りの建物に優雅な装飾が施されるようになりました。特に、ホリールード宮殿やエディンバラ大学の旧キャンパスなど、ルネサンス様式の影響を受けた建物が数多く存在し、これらはエディンバラの文化的発展を象徴する建築として評価されています。
ジョージアン建築の革新
エディンバラ新市街は、ジョージアン建築の優れた例として知られており、その計画的な都市設計と美しい建築が特徴です。
ジョージアン建築の特徴
ジョージアン建築は、18世紀後半から19世紀前半にかけて流行した建築様式で、シンプルで均整のとれたデザインが特徴です。エディンバラ新市街では、この様式を取り入れた建物が多く、特に対称性や均整のとれたファサード、大きな窓が特徴的です。また、これらの建物は石造りで、エディンバラの寒冷な気候に適した設計が施されています。
新市街の都市計画
エディンバラ新市街は、18世紀後半に計画的に建設されたエリアであり、その整然とした街路と広場、ジョージアン様式の建物が調和した都市景観が魅力です。新市街の都市計画は、当時の啓蒙思想を反映しており、効率的で美しい都市を目指した結果、現在の新市街が誕生しました。この計画は、後の都市計画に大きな影響を与えたと言われています。
エディンバラのフェスティバルと文学遺産
エディンバラは、毎年多くの文化イベントが開催される場所として知られており、その中でもフェスティバルと文学遺産は特に重要です。
エディンバラ・フェスティバル
エディンバラは、毎年8月に開催されるエディンバラ国際フェスティバル(Edinburgh International Festival)や、エディンバラ・フェスティバル・フリンジ(Edinburgh Festival Fringe)で世界的に有名です。これらのフェスティバルは、音楽、演劇、ダンス、コメディなど、さまざまな芸術分野のイベントが街全体で開催され、世界中からアーティストや観光客が集まります。特に、フリンジフェスティバルは、インディーズの演劇やパフォーマンスの登竜門として知られ、多くの著名なアーティストがここでキャリアをスタートさせました。
エディンバラの文学遺産
エディンバラは、スコットランドの文学の中心地としても知られており、数多くの著名な作家を輩出してきました。特に、サー・ウォルター・スコット、ロバート・ルイス・スティーヴンソン、そして最近ではJ.K.ローリングなどがエディンバラにゆかりのある作家として知られています。エディンバラ市内には、これらの作家に関連する記念碑や博物館が点在しており、文学ファンにとっては必見のスポットです。また、エディンバラは、ユネスコの「文学都市」にも指定され、その文学遺産が世界的に評価されています。
エディンバラ訪問のための実用ガイド
訪問時期と気候
エディンバラを訪れるのに最適な時期は、夏(6月から8月)と冬(12月から2月)です。この期間は、それぞれ異なる魅力を楽しむことができます。
夏(6月から8月)
夏は、気温が15度から20度と比較的穏やかで、観光に最適な季節です。特に、エディンバラ・フェスティバルが開催される8月は、街全体が活気に満ち溢れ、多くの観光客で賑わいます。観光やショッピング、フェスティバル参加など、さまざまなアクティビティが楽しめます。
冬(12月から2月)
冬は、気温が0度から5度と寒冷ですが、クリスマスシーズンやホグマネイ(Hogmanay)と呼ばれるスコットランドの年越しイベントが楽しめる時期です。特に、エディンバラ城や街のライトアップが幻想的な雰囲気を醸し出し、冬のエディンバラならではの魅力を堪能できます。
観光に適した装備と注意点
エディンバラを訪れる際には、以下のポイントに注意して快適に観光を楽しみましょう。
適切な服装と装備
- 歩きやすい靴: 旧市街は石畳の道が多く、坂道も多いため、歩きやすい靴を用意しましょう。
- 防寒具: 冬の訪問では、厚手のコート、手袋、帽子などの防寒具が必要です。夏でも夜間は涼しくなることがあるため、軽いジャケットを持参すると良いでしょう。
- 雨具: エディンバラは天候が変わりやすいため、雨具を持参することをおすすめします。
観光マナーと注意点
- 写真撮影: 旧市街や新市街での写真撮影は可能ですが、他の観光客や地元の住民に配慮しましょう。また、教会内など宗教的な場所ではフラッシュを控えることが望ましいです。
- 静粛を守る: 教会や博物館など、宗教的または文化的な場所では静粛を守り、他の訪問者の邪魔にならないようにしましょう。
- 環境保護: ゴミは必ず持ち帰り、エディンバラの美しさと環境を守りましょう。
エディンバラ周辺の観光スポットとアクティビティ
エディンバラ訪問の際には、その周辺にも多くの観光スポットやアクティビティがあります。
ロスリン礼拝堂
ロスリン礼拝堂(Rosslyn Chapel)は、エディンバラ市内から車で約30分の距離にある美しいゴシック様式の教会で、ダ・ヴィンチ・コードで有名になりました。礼拝堂の内部は、非常に細かい石彫りで装飾されており、その謎めいた彫刻が多くの観光客を魅了しています。また、礼拝堂周辺には、ロスリン城の遺跡や美しい自然が広がり、ハイキングや散策を楽しむことができます。
スターリング城
スターリング城(Stirling Castle)は、エディンバラから車で約1時間の距離にある壮大な城で、スコットランドの歴史において重要な役割を果たしてきました。城内には、王室の居室や大広間、礼拝堂があり、スコットランドの歴史や文化を学ぶことができます。また、城の周囲には、美しい庭園や展望台があり、周辺の景色を楽しむことができます。
スコットランド国立博物館
スコットランド国立博物館(National Museum of Scotland)は、エディンバラ市内に位置する大規模な博物館で、スコットランドの歴史、文化、科学、自然史など幅広い展示が行われています。特に、スコットランドの歴史や産業革命に関する展示は充実しており、観光客だけでなく地元の人々にも人気があります。また、博物館の屋上テラスからは、エディンバラ市内の景色を一望することができます。
エディンバラ訪問のための実用ガイドを参考にして、快適で充実した観光体験を楽しんでください。歴史と文化が息づくエディンバラの旧市街と新市街を堪能し、持続可能な観光を実践し、エディンバラの価値を守り続けましょう。